過去の共同研究事例

 東京工業大学教員として企業と製品共同開発をした事例の中で,公表されている例を紹介します。実際には未公開のものも数多く,ソフト開発では全く協力者として名前が公表されないのが通常であり,そのような例は省いております。3Dプリント複合材の事例もありますが,公表を控えているために、ほとんどご紹介できません。このために古い事例になりますことをご理解ください。なお、実施年は記憶によるものだけですので曖昧であることをご了解ください。なお、共同研究で論文化されていても、共同研究先が論文の連名もしくは論文謝辞にないものは記載していません。

(1)電業社 ジェットファン異常検知システム (2000年~2002年頃)

 トンネルの換気をするジェットファンの異常を遠隔地から検知するために作成したシステムです。ジェットファンつり下げ部分に取り付けたロードセルの出力を当時最新の小型PCで遠隔モニタリングする装置と,そのアルゴリズム開発の一部にご協力させていただきました。この製品は現在も電業社様の製品紹介に掲載されています。

(2)電業社 複合材破壊センサーとインターネットを用いた下水パイプモニタリングシステム (2001年頃)

 下水パイプ内にライニングされるガラス繊維強化プラスチックと同じ素材に導電性のセンサーを取り付けて,地震時の下水パイプの破壊を下水内に設置した微小なインターネット端末でモニタリングする装置の開発です。当時としては超小型のカードサイズのネット端末で破壊を遠隔地からモニタリングするIoTを先取りした研究でした。これは論文化されていますが残念ながら試作品で終わりました。

(3)ブリヂストン タイヤのひずみモニタリング (2004年~2009年頃)

 タイヤの走行中にひずみをモニタリングするセンサーを開発しておりました。上記以外の論文もありますが、研究段階で終わっています。

(4)JAXA 超音速機結合金具のトポロジー最適化 (2009年~2012年頃)

 JAXAで使用されていた超音速実験機の翼と胴体を結合する金具の条件を用いて、次世代機を想定したトポロジー最適化を実施していました。これは金属製品です。共同研究開発までで終わりました。

(5)富士重工(現 スバル) CFRPの雷電流解析のための導電性測定 (2013年~2016年頃)

 ボーイング787の就航により、大型航空機の落雷時の電流解析シミュレーションが必要となりました。そのためには正確な導電率測定が必要です。この共同研究では,既に開発されていたCFRP積層板の電流理論を実験的に確認し、厚さ方向の導電率測定を行っています。

(6)川崎重工 CFRP製板バネの損傷モニタリング (2014年~2017年頃)

 CFRP製板バネを搭載した台車の健全性モニタリング装置として電気抵抗変化法を取り上げ,その電極作成や評価の共同研究を行ったものです。これは試作機が実機に搭載されて実機の長期モニタリングに成功しています。

(7)トーヨーカネツ 液体水素タンクの断熱用複合材構造 (2015年~2019年頃)

 大型液体水素タンクを実現するために必要な床部分とアンカーストラップの複合材料設計について,指導させていただいたものです。この論文は2021年5月に日本高圧力技術協会から科学技術賞を受賞しております。

(8)IHI 3D プリント短繊維複合材の異方性 (2019年頃)

 この研究は本来は別の目的ですが,その別目的を達成するための基礎研究の位置でスタートしたものです。短期で終了し,基礎的な内容ですので直接製品開発とは無関係です。

その他

 AGC様とは強化プラスチック協会誌に論文が掲載されていますが,ネット上に論文が掲載されていないために詳細は控えます。 論文や特許化されていないものは含まれていませんが、GFRP構造の設計支援や最適成形手法の支援,3D プリント複合材の成形装置の支援なども行いました。素材をお持ちいただいて,それを用いた新製品の開発支援なども実施しております。

 金属材料においても、破壊力学に基づく破壊原因究明の支援や最適設計の支援の実績があります。

 3Dプリンタならではの複雑構造の製品開発も実施例がありますが,詳細は提示できません。

 製品開発には詳細なデータの開示が不可欠です。お客様の会社のコンプライアンス上の問題がある場合には,お客様の社内担当者の設計指導をご選択いただけるとうまくいきます。過去の経験から,多くの場合には,社内に開発担当者をおいて,実際の作業は社内で行い,その指導を依頼する形式が一番容易です。開発作業そのものを依頼されると、データ開示不足で先に進まなくなる例が多いです。